東京フィルハーモニー交響楽団 第880回オーチャード定期演奏会|大河内文恵

東フィル東京フィルハーモニー交響楽団 第880回オーチャード定期演奏会

2016年5月15日 Bunkamuraオーチャードホール
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)撮影日:5/16@サントリーホール

<演奏>
東京フィルハーモニー交響楽団
アンドレア・バッティストーニ(指揮)

<曲目>
ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」序曲
ニノ・ロータ:組曲「道」
~休憩~
レスピーギ:交響的印象「教会のステンドグラス」
(アンコール)
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

昨年、東京フィルハーモニー交響楽団の首席客演指揮者に指名されたバッティストーニの2年目シーズン初回は、3人のイタリア人作曲家による作品がとりあげられた。オペラファンでなくともおなじみのヴェルディ、イタリア映画には欠かせない作曲家のニノ・ロータ、20世紀初頭のイタリアを代表する正統的作曲家レスピーギ。

バッティストーニがイタリア・オペラを振るときには、それが日本のオーケストラであっても、「オペラの音」「イタリアの音」として響く。それが、オーケストラ・ピットではなく、舞台のフル・オーケストラと対峙したときにどうなるのか、それが非常に楽しみだった。

『道』では、冒頭で指揮とアンサンブルが噛み合わない場面がみられたが、第2曲中盤の弦楽器によるメラコリックな旋律で一気に音楽が動き出し、映画館のスクリーンの前に座っているかのようだった。その動きは、映画の中で、ジェルソミーナがザンパノに連れていかれる、まさにストーリーが動き始める場面の音楽であることとシンクロしていたのかもしれない。

彼のもう1つの魅力は、指揮ぶりから出てくる音が見え、オーケストラからその通りの音が出る爽快感である。その意味で、真にシンフォニックなレスピーギの曲では自由自在にオーケストラを操り、多彩な音楽を聴かせた。

オーケストラの演奏会のプログラムに、オペラの中の楽曲や映画音楽をいれることはさほど珍しいことではない。オペラの序曲はコンサートの開始の曲としてよく使用されるし、間奏曲は休憩後の最初に置かれたり、アンコール曲として定番化されているものもある。しかし、それらはたいていの場合、オペラの雰囲気を醸し出すというよりは、オーケストラ曲として定番化された楽曲の1つとして演奏されることが多い。

アンコールの『カヴァレリア』は、オーケストラのコンサートに使われる間奏曲の代表的存在だが、オペラの文脈から離れて演奏される場合には、旋律の美しさを強調した非常に感傷的な演奏になることが多く、逆にオペラの中で演奏されるときには、それに比べて意外なほどあっさりと演奏される。バッティストーニの演奏は、そのどちらでもなく、この曲の儚げで切ない美しさを聴かせながらも、その感傷に酔うギリギリ手前のところでうまくバランスを取っている絶妙なもので、「お手本」として永久保存したいと思わせるものであった。最後の音が終わり、指揮者の腕が降ろされた一瞬あとに1度だけかかったbravo!!の声が会場の気持ちをじつによく代弁していた。

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