新日本フィルハーモニー交響楽団 第559回 定期演奏会|藤堂清

新日新日本フィルハーモニー交響楽団 第559回 定期演奏会

2016年5月27日 すみだトリフォニーホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種( Kiyotane Hayashi)

<演奏>
指揮:下野竜也
ピアノ:トーマス・ヘル ⁺
合唱:東京藝術大学合唱団 ⁺⁺
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

<曲目>
三善 晃:管弦楽のための協奏曲
矢代 秋雄:ピアノ協奏曲 ⁺
——————-(休憩)——————–
黛 敏郎:涅槃交響曲 ⁺⁺

指揮者の下野が、これら三作品に新たな血を注ぎ、今までとは異なるアプローチを探るコンサート、成功した部分も多かったが、課題を残した面もあった。

三善、矢代、黛、三人の日本人作曲家の作品による定期演奏会。矢代と黛は1929年、三善は1933年生まれ、戦争から戦後の時代に青春期をすごし、同時期にフランスで作曲を学んだという共通点もある。この日のプログラムの三曲はともに尾高賞を受けている。受賞年は、三善が65年、矢代が68年、黛が59年である。発表当初より高く評価され、演奏される機会にも恵まれてきた。
この日のプログラムで注目されたのは、矢代のピアノ独奏にトーマス・ヘルを起用したこと、黛の合唱に東京藝術大学合唱団を使ったことだろう。
特にヘルのピアノは、この作品の魅力を引き出し、細部に光を当てたといえる。彼は、第2回 1996年オルレアン国際ピアノ・コンクールで第1位となり、またジョルジョ・リゲティのエチュート全曲の演奏・録音が評価を受けるなど、現代音楽の演奏者として名声を得ている。おそらく初めて取り組んだこの協奏曲に、ヘル自身、新鮮な喜びを感じたのだろう。第2楽章での、リズムや、同じ音型での微妙な音色の変化などが、他の演奏家による録音では聞きとれなかった大きな幅をもって表現された。やわらかなタッチと強打の対比、倍音が豊富と感じさせるペダリングの妙。矢代の音楽がインターナショナルな関心を持たれることを期待させる演奏であった。
演奏順とは逆になるが、三善の《管弦楽のための協奏曲》も、下野の指揮のもと、新日本フィルの木管、金管、弦、打楽器の各部が実力を発揮し、協奏的要素と独奏的要素のバランスのとれた演奏を聴かせた。
後半の黛の《涅槃交響曲》では、舞台上のオーケストラと客席に配置される二組のバンダ、そして舞台後方に男声合唱という編成で演奏された。コンサートホールのどこにバンダを置くかで、聴衆の印象はずいぶん変わるだろう。今回は1階の前後を分ける通路の左右に配置、このため、1階席でも、通路より前の聴衆にとっては、三つの音源に包みこまれるようで、音楽的にも音響的にも興味深い体験となった。一方後ろ側では、バンダの音が反射音としてのみ聴こえることとなり、全体的な印象もずいぶん異なったようである。二階や三階ではあまり音源の場所の違いは感じられなかったかもしれない。より多くの聴衆が通常と異なる音響も楽しむことができるよう、さらなる工夫を期待したい。 この曲の演奏で残念だったのは、合唱が西洋音楽の再現という方向性が強かった点。もともと、声明やお経を取り込もうと書かれたものなので、整った合唱サウンドがこの曲の持つ原初的な力を表現するのと別方向に向かっているように思われた。

ほぼ50年(半世紀!)前に作曲された三曲、これからも色々な形で取り上げていく価値があることを示すコンサートとなった。企画された方、演奏された方に感謝したい。中でも、指揮者・下野の功績は大きかったと思う。

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