植村理葉 ヴァイオリンリサイタル2016|谷口昭弘

植村植村理葉 ヴァイオリンリサイタル2016
フォーレからツィンマーマンへ

2016年4月17日 東京文化会館 小ホール
Reviewed by 谷口昭弘(Akihiro Taniguchi)

<演奏>
ヴァイオリン:植村理葉
ピアノ:岡田博美

<曲目>
フォーレ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番イ長調 Op. 13
プーランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ《ガルシア・ロルカの想い出に》
(休憩)
B. A. ツィンマーマン:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ
フォーレ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番ホ短調 Op. 108
(アンコール)
フォーレ:《月の光》
フォーレ:《子守歌》

植村の本公演は、フォーレのソナタを筆頭にフランス物を中心とし、無伴奏のツィンマーマンをアクセントに添えたプログラムで魅了する。フォーレの《第1ソナタ》では、やさしい泡立ちのピアノ前奏につづき、滑らかに揺れ動く歌からは詩情が溢れる。ピアノとの動機のやり取りや展開を探る場面では、2人が互いの息づかいを感じ取りながら、時に柔らかく、時に力強く主張し合う。第2楽章は、軽やかな表面に潜められた、内省的な情感が前半に聴かれたが、岡田の美しいピアノによって、羽根を伸ばすような自由な流れを植村も後半は聞かせていた。 ほとばしる電光石火のような主部と悩ましげな中間部を聴かせた第3楽章に続き、第4楽章では、重厚さを保ちつつ、細やかな動きを大切にしながら、説得力のあるフィナーレを築きあげた。

プーランクの《ソナタ》は、絶好のスタートから、二人の一体感に引き込まれた。一瞬も息をつく暇がないほど一つの楽章で大きく性格を変える楽想の連続を一心同体で突き進むためにも、あの衝撃の冒頭が必要だったに違いない。 ラプソディックに、しかしながら緻密に響きあう二人が美しい第2楽章につづき、攻め続ける第3楽章では、その勢いゆえに、クライマックスが狂気迫るものとして立ち上がり、最後まで聴き手をプーランクの世界から離さなかった。

沈黙との戯れから始まったツィンマーマンの《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ》は、少しずつ脈動を加え、繰り返しのリズムの中から濃厚になり、吹っ切れるエンディングまでの流れを楽しんだ。 そしてフォーレの《第2ソナタ》では、同じ作曲家でも第1番よりも音楽がより熟したということもあるのだろう、生命力を保ちながら、洗練された、なめらかな線を植村は聴かせていく。込み入った構成美の作品だが、大上段から構えるような音楽ではなく、じっくりと一つ一つの楽想をつなげ、積み上げながら、大きな流れになっていく。そして岡田のピアノは、このソナタのシンフォニックな感覚を醸し出していった。

アンコールでも二人は麗しいフォーレの小品を聴かせた。これらを含め、植村と岡田は2曲のソナタを中心にしたフォーレの作品集のCDをリリースするそうだ。いまからそれを手にするのを楽しみにしたくなるようなコンサートではなかっただろうか。