ティル・フェルナー&マーク・パドモア|藤堂清

fellnerティル・フェルナー シューマン プロジェクトII
with マーク・パドモア

2016年2月18日 トッパンホール
Reviewed by 藤堂 清
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
マーク・パドモア(テノール)
ティル・フェルナー(ピアノ)

<曲目>
シューマン:5つの歌曲op.40
ハンス・ツェンダー:山の空洞の中で ~ジャン・パウルの詩による2つの歌(2015) 日本初演
ベートーヴェン:遥かなる恋人に寄す op.98
—————–(休憩)———————-
シューマン:詩人の恋 op.48
—————(アンコール)——————-
シューマン:リーダークライス op.39より 「月の夜」

ピアノのティル・フェルナーがトッパン・ホールで行った<シューマン・プロジェクト>の第二夜、テノールのマーク・パドモアとの歌曲リサイタル。シューマンの歌曲が中心ではあるが、今年1月15日に世界初演されたばかりのハンス・ツェンダーの新作を入れるなど、この二人ならではのプログラム。 そのツェンダーの歌曲『山の空洞の中で』は、パソコンをピアノの右にのせ、それをフェルナーが操作して電子音響を加えながら弾くというもの。ピアノの弦の上にも二つの物をフェルナー自身が置き、プリペアドというほどではないが、ある音域で倍音が抑えられるといった響きの変化をつけていた。ここでのパドモアの子音を明確にする発音は、「滴」「涙」「露」といった詩の中で重要な言葉を浮き上がらせ、初めて聴く作品を受け入れやすいものとしていた。

ベートーヴェンの連作歌曲集『遥かなる恋人に寄す』、第一曲のゆったりとした歌い出し、第三曲での弾むような音楽、最後の第六曲で冒頭の旋律に回帰するところ、二人の息がピッタリと合い、実演で聴いたこの曲集の中でも最良の出来栄えであった。

後半の『詩人の恋』、フェルナーのピアノの美しい響き、パドモアの明確な言葉、二人の安定したテンポが、自然に流れを作り出していた。恋に破れた思いをぶつける第七曲、愛と苦しみを大きな棺に納め海に葬ると歌う最後の第十六曲など、もっとドラマティックでもよいかとも感じたが、彼ら二人はハイネとシューマンが描ききっていると考えたのだろう。

アンコールの歌い出しで、めずらしくパドモアが音程をとるのに苦労していた。1961年生まれ、55歳の彼、長距離移動や環境変化などの影響を受けやすくなってきているのかもしれない。無理をせず歌い続けてほしい。

リサイタルとしてはまずまずの完成度であり、ツェンダーの新作を聴けたので満足はした。ただ、プログラムの最初におかれたシューマンで終始ピアノが大きく聞こえ、声とのバランスがくずれていた。ピアノの音自体も芯がぼやけたように思われた。この曲集の第二~四曲の胸をえぐるような展開、いつものパドモアならもっと悲痛な感じで聴かせてくれたのではないかと残念であった。

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