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鈴木優人&藤木大地|藤堂清

15鈴木優人&藤木大地表面出力見本Concert Review

《バロック・ライブ劇場》第4回
鈴木優人&藤木大地
~シンプロン・オリエント急行~

2015年11月12日 王子ホール
Reviewed by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
鈴木優人(チェンバロ、オルガン)
藤木大地(カウンターテナー)
アンサンブル・ジェネシス
山口幸恵(ヴァイオリン)
廣海史帆(ヴァイオリン)
吉田 篤(ヴィオラ)
懸田貴嗣(チェロ)
今野 京(コントラバス)

<曲目>
フレスコバルディ:トッカータ ト調
モンテヴェルディ:あの高慢な眼差しは
ファルコニエーリ:パッサカリア
モンテヴェルディ:アリアンナの嘆き
カステッロ:ソナタ 第1番 イ調
ヴィヴァルディ:オペラ「ジュスティーノ」より よろこびと共に歌わん
:弦楽のためのシンフォニア ニ長調 RV125
:オペラ「狂乱のオルランド」より 深い闇の世界へ
———————-(休憩)——————-
パーセル:夕べの賛歌
ヘンデル:オペラ「オルランド」より 私に戦わせよ
:オペラ「アルチーナ」より 緑の牧場よ
:オペラ「タメルラーノ」より 恩知らずの顔への苛立ち
:オルガン協奏曲 第5番 ヘ長調 HWV293
:オペラ「ロデリンダ」より
豪華で空虚な死の場~どこにいるのか、愛する人よ?/生きよ、暴君よ
:オペラ「リナルド」より
シンフォニア/いとしい許婚、いとしい恋人よ/風よ、旋風よ
——————–(アンコール)—————-
ヘンデル::オペラ「アルチーナ」より 緑の牧場よ

バロック音楽の時代、ヴェネツィアで活躍したモンテヴェルディとヴィヴァルディ、ロンドンを主な活動拠点としたヘンデル、お客を、その二つの都市を結ぶ豪華列車シンプソン・オリエント急行に招き、彼らの音楽を楽しんでもらおうというコンサート、その列車の車掌(案内役)が鈴木優人と藤木大地の二人。
鈴木は、チェンバロとポジティヴ・オルガン、二台を操り、独奏あり、アンサンブルの通奏低音あり、解説ありと、常に舞台の中心。藤木はカウンターテナーという通常の会話では使わない声で歌うため、途中での解説や話はせず、歌うことに専念した。
前半はイタリア生まれの作曲家の作品。藤木の声、最初のモンテヴェルディの『あの高慢な眼差しは』では、ところどころで響きが薄いという印象を受けたが、二曲目以降はそのようなことはなく、音楽にひたることができた。当時全盛であったカストラートによって歌われ、高い声楽技術が要求される部分が多い曲、男性が裏声(ファルセット)を利用して歌うこの声種では音色の変化が限られる人もいるが、彼の歌にそういった不満は感じなかった。恋人テゼオに島に置き去りにされたアリアンナが彼に訴える”Ah Teseo, ah Teseo mio”という短い節の中でも、高ぶっていく思いが聴き取れ、胸を打つ。
後半はロンドン時代のヘンデルの作品が中心、彼がロンドンで上演したオペラのアリアが取り上げられた。『アルチーナ』のゆったりとした部分、『ロデリンダ』の細かな装飾、『リナルド』の大きな飛翔など、それぞれの特徴を活かし、楽しませてくれた。
歌の合間に演奏されたオルガン協奏曲は10分ほどの短い曲、鈴木のオルガン演奏の技術とアンサンブル・ジェネシスとの協調を聴くことができた。
このコンサートで感じたことが二つ。
藤木のように一人でコンサートを担える日本人カウンターテナーが出てきたことは、これからこの声種に挑戦しようという人にとって大きな目標となるだろう。彼自身もテノールから転向して4~5年というから、これからが楽しみ。
また、鈴木がアンサンブル・ジェネシスを通じ、バロックから現代までいろいろな音楽に挑戦してきていることも、新たな音楽活動につながる可能性を感じる。
三十代半ばの二人の共同作業、注目していきたい。

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