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東京混声合唱団 ~歌い継ぎたい日本の歌~|藤堂清 

%e6%9d%b1%e4%ba%ac%e6%b7%b7%e5%a3%b0音楽堂アフタヌーン・コンサート
山田和樹指揮 東京混声合唱団 特別演奏会
~歌い継ぎたい日本の歌~

201696日 神奈川県立音楽堂
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh
Photos by青柳聡/写真提供:神奈川県立音楽堂

<演奏>
指揮:山田和樹
ピアノ:小林有沙
合唱:東京混声合唱団

<曲目>
歌い継ぎたい日本の歌
  里の秋
  故郷
  見上げてごらん夜の星を
  蛍の光
  春の小川
  雨降りお月さん
  かもめの水兵さん
  夏は来ぬ

~柴田南雄 生誕100年・没後20年~
柴田南雄(作曲):萬歳流し-秋田県横手萬歳によるシアターピース-(1975)
—————-(休憩)——————-
上田真樹(作曲)林望(詩):混声合唱とピアノのための組曲《夢の意味》
(2007年東京混声合唱団委嘱作品)
I. 朝あけに II. 川沿いの道にて III. 歩いて IV. 夢の意味 V. 夢の名残

歌い継ぎたい日本の歌
  みかんの花咲く丘
  うみ
  リンゴの唄
  おもちゃのチャチャチャ
  幸せなら手をたたこう
  思い出のアルバム
  今日の日はさようなら
—————-(アンコール)——————-
森田花央里(作曲)葉祥明(詩):ひかりの世界からの手紙(世界初演)

「歌い継ぎたい 日本の歌」というタイトルで行われた平日マチネのコンサート、誰もが知っている歌を聞かせてくれる。間におかれた柴田の《萬歳流し》、上田の《夢の意味》は、プロの力量が発揮される曲。

山田和樹は、柴田南雄の生誕100年・没後20年という記念の年にあたり、彼の作品を積極的に取り上げてきている。この日演奏された《萬歳流し》は、秋田県横手に伝わっていた萬歳の最後の一組の実演の録音、録画、聞き書きに基づき、1970年代に残っていた7曲から《御門開き》と《秋田御国萬斎》の2曲を素材とし、作成された。合唱団の男声は、ペアを組み客席をまわり、「門付」をしていく。会場のあちこちから異なる声が響き、移動しながらということもあり音場が常に変化していく。舞台に残った女声の高音と響きあい、普段聞くことのできない効果を生んでいた。

《夢の意味》は5曲からなる作品、「混声合唱とピアノのための組曲」という名にふさわしく、ピアノの活躍する部分も多い。この日のピアニストはソリストとして活動している小林有沙。打鍵の鋭さや音のダイナミクスといった点で、山田が彼女にオファーした意味は感じとれた。
夢か現かという普遍的な問題を歌うこの曲集、女声の高音域の美しい響きとそれに続く他の声部の言葉の重なりが印象的であった。

この2曲以外の「歌い継ぎたい日本の歌」には、19世紀の作品から20世紀後半に作られた曲が含まれている。小学校で習い、おぼえたという世代もあるだろうし、放送で聴いたという人も多いだろう。
<おもちゃのチャチャチャ>では各人持ち込んでいた茶筒をふったり、<幸せなら手をたたこう>では、聴衆も巻き込んで、歌に合わせた振りを付けるなど、楽しい時間であった。
混声合唱への編曲は、上田真樹、篠田昌伸、鷹羽弘晃等によるもの。こういった仕事も「歌い継ぐ」ためには大切。

アンコールは合唱だけで、《ひかりの世界からの手紙》の初演。葉祥明の詩、10才で亡くなった少年が母親へ語りかける言葉を朗読、それに合わせるように合唱が流れる。死について考えさせる曲となっている。

ところで「歌い継ぎたい日本の歌」というこの日のタイトルだが、誰が何のために「歌い継ぐ」のだろう。柴田作品のもととなった横手萬歳を伝える人はすでにいなくなっている。「門付」を受ける家もないだろう。いや「門付」がどのようなものかすら知らない人がほとんどかもしれない。このような形で残され、上演が可能となっただけでも良しとすべきであろう。
唱歌、童謡といった歌も、いつまでよく知られた曲であり続けるだろうか。60代、70代の人は懐かしさを感じるが、今の子供たちがどのように感じ、それらを歌い続けたいと思えるのか。こういったコンサートにバトンを受け取る世代が来てくれるなら、「歌い継ぐ」ことにつながっていくのかもしれないが。

山田和樹が音楽監督に就任してから2年、東京混声合唱団も創立60年ということで、新たな地平を切り開こうとしている。この神奈川県立音楽堂でのコンサートも、今年を第1回として5年間にわたり開催される。来年は8月29日の予定。
学校などの場でのこの合唱団の活動にも期待したい。

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