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ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送交響楽団|藤堂清

finConcert Review

ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送交響楽団
シベリウス生誕150年記念 交響曲全曲演奏会

2015年11月2日 すみだトリフォニーホール
Reviewed by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 三浦興一/写真提供:すみだトリフォニーホール

<演奏>
ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送交響楽団

<曲目>
シベリウス:交響詩『タピオラ』 作品112
シベリウス:交響曲第7番 ハ長調 作品105
———————-(休憩)——————-
シベリウス:交響曲第5番 変ホ長調 作品82
——————–(アンコール)—————-
シベリウス:組曲『ペルシャザール王の饗宴』作品51より「ノクターン」
シベリウス:悲しきワルツ

大樹や大きな滝といった、人間のスケールをはるかに超えた自然と向き合うときに抱く、畏敬の念のようなものを、聴きながら感じた。
すみだトリフォニーホールでは、ジャン・シベリウスの生誕150年を記念し、ハンヌ・リントゥの指揮で交響曲全曲演奏会を行った。10月に新日本フィルハーモニー交響楽団を振って第1番~第4番、第6番の5曲を演奏しており、この日がシリーズ最終日。リントゥが首席指揮者をつとめているフィンランド放送交響楽団が残る2曲、第5番、第7番を担当した。
シベリウスの後期の作品3曲によるこの日のプログラム、作曲された順序をさかのぼっての演奏である。
最初の曲、『タピオラ』から、低弦のメリハリの効いた音、その上でピッチもボウイングもそろった弦楽器群が弾む。木管も金管も音色は地味な印象だが、まったく危なげがない。リントゥの作り出す音楽は、大きな身振りの指揮姿にも似て、大胆な変化に富んでいる。テンポの揺らぎ、特定のパート(ヴィオラといった)の強調など、思いがけないところで聴こえるさまざまな指揮者の仕掛けに引き付けられた。リントゥは長めの指揮棒を持ち、必要とあれば早く、大きく振る。そういった指揮にオーケストラが確実に対応していく。パート全体がまったく乱れずに付いて行き、大きなうねりを生み出していくことに感心。
ついで演奏された交響曲第7番は、シベリウス最後の交響曲で、単一楽章の形式をとった20分ほどの短めの曲である。ここでも金管の優秀さ、オーケストラのバランスの良さがわかる。テンポや曲想の変化がリントゥの指揮で強調されていることも関係するのだろうが、通常聴くよりも「巨大」なものに感じられた。
後半におかれた交響曲第5番も、緊張感に満ちた演奏であったが、聴いている者がともに呼吸し、ともに共鳴している、そういった印象を受けた。演奏後の拍手は、長い沈黙の後、爆発するように始まった。
アンコールの1曲目『ノクターン』はフルートのソロが中心。昨年このオーケストラの首席フルート奏者に就任した小山裕幾が見事に演奏した。この曲を選んだのはリントゥの彼に対する配慮だったのだろう。
ベルリン・フィル、ウィーン・フィルといった有名オーケストラ以外は、集客に苦労しているという話を聞く。実際この日もかなり空席があったが、聴衆の多くは感銘を受け、満足して家路についたに違いない。「今年一番のオーケストラ・コンサート」という評価も聞いた。
「ブランド」では決められない音楽の感動、どうやって選んでいくか、聴衆一人一人の感性が問われる。

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