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サントリー芸術財団 サマーフェスティバル 2016 <カイヤ・サーリアホ> 室内楽|藤堂清

summerfes2016-%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%94%e3%83%bcサントリーホール国際作曲委嘱シリーズNo.39(監修:細川俊夫)
テーマ作曲家<カイヤ・サーリアホ> 室内楽

2016年8月24日 サントリーホール ブルーローズ
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
写真提供:サントリー芸術財団

<演奏>
チェロ:アンッシ・カルットゥネン
指揮・ピアノ:石川星太郎
ヴァイオリン:竹内弦
ヴァイオリン:アリーサ・ネージュ・バリエール
アンサンブルシュテルン

<曲目>
カイヤ・サーリアホ: 7匹の蝶 (2000)
    トカール (2010)
    テレストル(地上の) (2002)
—————-(休憩)——————-
カイヤ・サーリアホ:ノクチュルヌ (1994)
    光についてのノート (2010) 〈日本初演〉

サントリーホールの国際作曲委嘱シリーズの第39回、今年はフィンランド生まれのカイヤ・サーリアホに委嘱され、作品は30日のオーケストラ・コンサートで初演された。それに先立つこの日は、彼女のさまざまな編成の室内楽作品を演奏。 1曲目の《7匹の蝶》はアンッシ・カルットゥネンのチェロ独奏。技術的にも音楽的にも異なる7曲からなる。左手を蝶の羽ばたきのように動かし二つの音を行き来する冒頭から、いつの間にか音がとぎれ、次の曲が始まる。蝶のようなはかなさが主題なのだろう。チェロという楽器から多様な音を引き出している。この曲の初演者であるカルットゥネンの演奏、聴きごたえがあった。

《トカール》は、竹内のヴァイオリン、石川のピアノによる演奏。二つの楽器はそれぞれのメカニックの違いをいかした音楽を奏でつつ、次第に寄り添い同じ音型を歌う。しかし最後にはヴァイオリンは浮遊するようにはなれていく。ピアノが主体となる曲だが、両者がもっと自己主張する方が効果的だったのではないか。

《テレストル(地上の)》はフルート協奏曲を改訂したもので、『鳥』に触発された作品という。フルート、ヴァイオリン、チェロ、ハープ、打楽器という編成で演奏される。チェロにカルットゥネンが入ったことで、他の奏者(アンサンブルシュテルンのメンバー)も引き締まった演奏を聴かせた。

アリーサ・ネージュ・バリエールが独奏した《ノクチュルヌ 》、短くそれほど技巧的とも思われなかった。

この日のハイライトは日本初演の《光についてのノート 》だろう。5楽章からなるチェロを独奏者とする協奏曲だが、オーケストラ版ではなく、弦各1の室内楽編成による演奏。ほとんどの奏者がソリストのように演奏することが求められる。この曲でもカルットゥネンが全体の方向を決めていた。チェロと他の楽器とのやり取りが多彩な音を生み、それが次々と変化していく様は興味深かった。

いろいろな楽器構成を用いた曲を聴くことで、サーリアホの多面的な作風を感じるとともに、常に音色を大切にしている点が、彼女の大きな魅力であり、今日に受け入れられる理由であろうと思った。

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