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クラシカル・プレイヤーズ東京 vol.6|谷口昭弘

クラシカル・プレイヤーズ東京 室内楽演奏会シリーズ vol. 6 “カルテット+1!”
2016年1月23日 東京芸術劇場シンフォニースペース
Reviewed by 谷口昭弘 (Akihiro Taniguchi)

<出演>
クラシカル・プレイヤーズ東京メンバー

クラシカルオーボエ:三宮正満、ヴァイオリン:木村理恵、荒木優子  ヴィオラ:成田寛、チェロ:山本徹

<曲目>
L. マッソノ:オーボエ四重奏曲 ヘ長調
M. ハイドン:コーラングレ四重奏曲 ハ長調 P.115
モーツァルト:オーボエ五重奏曲 KV406 (オリジナル:「セレナーデ」ハ短調KV388)
(アンコール)
モーツァルト:アダージョハ長調 KV580a (ミラン・ミュンクリンガー編)
(休憩なし)

東京芸術劇場のシンフォニースペースは、普段コンサートを行わない会場らしく、携帯電話などの電波も遮断されていないという。しかし、この約100席弱の空間は<室内楽>の演奏会にはぴったりだし、演奏者と聴衆との間もフレンドリーで密だった。

マッソノの「オーボエ四重奏曲」は 1798年くらいの作品という。今回の親密な演奏会場では、チェロの摩擦音も実に生々しい。第1楽章は三宮正満のクラシカルオーボエのヴィルトゥオーゾが見事だった。忙しく動きまわるパッセージの数々は、ヴィヴァルディのコンチェルトさえ想起させる。かわって第2楽章では、ヴィオラのアルペジオに乗せてオーボエが美しく叙情的に奏でる。第3楽章では、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにも活躍の場が与えられ、細かなやり取りが多く、各奏者の即座の反応が聴き手にも楽しく伝わってきた。

ミヒャエル・ハイドンの「コーラングレ四重奏曲」はマッソノ作品よりも対話が多く活用されており、各楽器の見せ場も多い。ヴァイオリンにもヴィルトゥオーゾ・パッセージが登場し、木村理恵が縦横無尽の活躍を聴かせた。緩徐楽章では素朴な中にも豊かな情感が盛り込まれ、さりげないドラマも演出されていた。

モーツァルトの「オーボエ五重奏曲」では、演奏者が一人増えただけというのに、ダイナミクスの振幅が大きく、迫力に富んでいた。ヴィオラは溢れるばかりのオーボエの情熱をサポートし、チェロは凄みを効かせる。少しずつ色彩を変えながら奏でられる、やさしいコラール風の伴奏に乗せてオーボエが細やかな歌を聴かせる第2楽章、優雅さと純朴さを兼ね備えた第3楽章につづき、第4楽章は一つひとつの変奏の中でも移り変わるモーツァルトの限りない創意が立体的に提示され、気の抜けない切迫感に満ちていた。そして、芯のしっかりとした合奏は、長調になっても、品のよいフィナーレを作り上げていた。

緊張感溢れたメイン曲につづいて、アンコールには、冒頭部分が合唱曲《アヴェ・ヴェルム・コルプス》に似た「アダージョ」ハ長調が演奏された。暖かな響きの中に聴衆の心がほんのりと満たされていった。

曲の合間には、演奏曲目の簡単な解説に加え、各奏者がそれぞれに楽器の特色について語った。ピリオド楽器や、それらが奏でる音楽が、ぐっと身近に感じられたコンサートだった。